[ネタバレあり]「リズと青い鳥」感想

というわけで「リズと青い鳥」ですが、公開初日、横浜ブルク13の初回に行ってきたので軽く感想を書きたいと思います。

以下ネタバレ(含・原作小説)を含むので、了承される方は【続きを読む】からどうぞ。

なお、響けシリーズにおける筆者の推しキャラは、色々いますが、一番は井上順菜(Perc・2年)です。

…赤学年が2年生なんだね、リズ鳥では。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・はじめに
塚本、瀧川、それから滝野は部費を払おう。

・全体的に
「響け!ユーフォニアム」シリーズを土台としているが、「響け!ユーフォニアム」と完全に別作品だと考えていいかと思う。
というのも、これまでの「響け!」シリーズは「部活」という団体が大きなウェイトを占めていたのに対し、「リズ鳥」は、完全に「希美とみぞれの関係性」にフォーカスしているからである。
あと、大きく変わった点といえば作画であろう。これまでの「響け!」に比べて、線が細目で、顔のパーツが小さくなり、髪が細かく乱れたりと、予告の時点からかなりの違和感があった。しかし、劇場で実際に観てみると、慣れるというか、こういう描き方もありかな、と思った。どことなく不安げで、アニメ”らしくない”絵こそが、リズ鳥にはふさわしいのであろう。後半になるにつれ、これまでの響けシリーズに寄ってきたような気がしたのは気のせいかもしれないし、そうでないかもしれない。それぞれの道を歩む決断をしたことが、お互いを強くさせ、それがキャラに反映された、と考えるのは邪推しすぎかもしれない。

・音楽
今回、劇伴が松田彬人→牛尾憲輔に変更となり、これもまた従来の響けシリーズと印象を変える要因となったと言える。のぞみぞの足音にリンクさせた劇伴は強く印象に残った一方で、松田彬人のほうが北宇治には馴染んでたかなとも思う。また重要なシーンでの劇伴は「リズと青い鳥(楽曲)」のアレンジになっていて、そっちの方がむしろ印象に残った。
キーとなる、コンクール自由曲「リズと青い鳥(楽曲)」は今作も松田彬人作曲であるが、「三日月の舞」に比べオーケストレーションが格段に良くなっていたと思う。ガイドブックを見れば、『吹奏楽への編曲を黒田賢一氏に全面的にお願いした』と。何はともあれ、「三日月の舞」で感じた、「何か薄い」という感じが今回はなかったのが、今回は素晴らしいと思う。
ただ、ハープが必須であり、「これコンクール本当に使えるの…?」とは思った。思ったら、後半で生徒がハープを弾いている場面があり驚いた。
また、課題曲の曲名が明かされていなかったのが気になった。これまでと整合性を取るならば2016年度(スカイブルードリームとかの年)であるはずだが…

・人物 -新キャラ・主要キャラ除く部員-
遂に現れた新1年生。剣崎梨々花。喋りがわざとらしいかとは思ったが、改めて原作を読み返すと、なかなかしっくりくる感じであった。この剣崎という子、みぞれと仲良くしようとしてあらゆる努力を重ねる。ダブルリード会に誘ったり、リードの調製のノウハウを教えてもらおうとしたり、など。物語が進むにつれ、最初は冷ややかであったみぞれが心を開いてくれる様が剣崎梨々花を通し表現されており、「のぞみぞ」の主要な線を「のぞ梨々」(でいいの?)で補完することができている。だがオーディションには落ちた。毎回、「鎧…じゃなくて剣崎です」と言うのは彼女なりのギャグなのか、あるいは「鎧」という堅い防御を持つものに対し切り込む「剣」という、分かりやすい比喩なのであろうか。
そして、ファゴットに1年生が2人。なんと1人はコントラファゴットを吹いている。なんでそんなもんが高校にあるんだ。まだ名前の設定はないのだろうか、あるいは従来の響けシリーズのように名前はあるのだろうか。
さらに、今回掘り下げられたのがフルートパートの人間模様。希美が「のぞ先輩」と呼ばれ親しまれており、と同様に2年生・中野蕾実が「つぼ先輩」と呼ばれている。この辺りの設定をちゃんと継承してるあたりは偉いと思う。小田芽衣子・高橋沙里も同様に継承されているはずであり、この中の誰かがピッコロ担当となっていた。誰だったかは、作画が変わったのもあるが、忘れた。1年生が早速生物研究部の男に告られたりデートにいく服の話をしてたりして、すごく高校生を感じたが、その中でありながら「慕われる希美」が強調されていて上手いと思った。
他方、リズ鳥であるから当然低音パートはほとんど登場せず、「大好きのハグ」の導入時にちらっと映ったのみであった。しかしながらW鈴木と後藤、梨子がはっきり描かれていた。さらに、みぞれ覚醒の演奏シーンにおいて久石奏がぼんやりとであるが描かれていた。
なお、今作においては、男子部員に台詞が1つもない。吹部男子としてちょっと悲しい。部費を払っていればこんなことにはならなかったのに(?)。

・人物 -主要キャラ-
まず希美。青い鳥だと思ったらリズだった人。なかなかに自分勝手な面が結構描かれていた。特に、優子に説教される場面が最も印象に残っている。相変わらずの底抜けの明るさでありながら、どこか裏があると思ってしまう希美であるが、最終的には「みぞれの才能への憧れ」がカミングアウトされ、視聴者である我々もポテンシャルの谷へと落ち着くことができる。
次にみぞれ。リズだと思ったら青い鳥だった人。やはりこれも寡黙でとっつきにくいという感じが良く出ていた。ってか、リードを自分で削って糸巻ける高校生って凄すぎるでしょ。木管のことはよく分からんが。
夏紀&優子はこれまでの響けシリーズから相変わらずの犬猿の仲()っぷりで、ともすればシリアス続きである本作において緊張の緩和をもたらしていたといえよう。それでありながら、優子部長のブレーキ役として大事なところで機能する夏紀、マジイケメン。あと体育のバスケの夏紀かっこよすぎ。
高坂麗奈は、やはり音楽にまっすぐであり、みぞれが希美とうまくいっていない可能性を指摘する。結果的にこの指摘が、不安定釣り合いの状態を崩し一気に解決へと向かわせることとなるので、本作の鍵といえよう。
タコ頭モブ黄前久美子も、本作でのセリフこそ両手で数えられる程度であるものの、麗奈との「リズと青い鳥」第3楽章のアンサンブルで直接的に希美・みぞれのお互いに真実に気付かせた点で、やはり鍵となっている。
葉月&緑輝は、唐突に挟まれた「ハッピーアイスクリーム」—同じ言葉を発してしまったら、先に「ハッピーアイスクリーム」と言った方がアイスを奢ってもらえる—の下りでのみの登場。希美とみぞれが、わだかまりの取れた最終シーンにおいて「ハッピーアイスクリーム」を繰り返していて、そのことにより視聴者は、葉月&緑輝の関係性と相似に考えることで、和解を実感できるのだと考えられるが、にしても挟み方が唐突だった感じはあった。
新山聡美も、また本作の鍵であるといえよう。生物室での対話によりみぞれのもやもやを解消し、一方ではみぞれにのみ音大進学を勧めたことにより希美にもやもやを生成した。まあ、とにかくも有能なコーチですごいと思う。
橋本真博も、みぞれのソロの違和感に気付いていたが、影は薄かった気がした。あと今回滝先生の影も薄い。指揮者であり演奏シーンにおいて絶対的な存在感はあるはずなのだが、何かあまり滝先生が頑張ってた感じがない。
そして、当然なのであるが今回、小笠原晴香を始めとした旧3年生陣は登場しない。本シリーズは某バーローとか青狸のように永遠に歳をとらないことはなく、「青春時代の有限性」は常に根底に存在している。TV2期1話の「冷凍保存できればいいのに」の下りなどはその最たる例であろう。だからこそ、心のどこかに儚さを置いていき、気がつけば高校時代を懐かしませるのかもしれない。

・人物 -童話「リズと青い鳥」
リズ&少女。インターネットでは叩かれがちだが、僕は良かったと思う。どちらがどちらかある程度曖昧にしてあり、なおかつ「童話中である」ことを強く意識させる声であったと言えよう。
アールトのおっちゃん、僕は個人的に好き。温厚なおじさんっていいよね、将来そうなりたい。あと、日が沈む前に店を閉める辺り、ホワイト企業って感じがして大変良い。弊ラボも見習ってほしい。「実験失敗したらそれでいいや」の心、「今日はパン屋そろそろ閉めるか」に通じると思うんだけど。

・時系列の整合性
ざっくり言えば、新1年入学〜関西大会前、2016年の4-9月と解するのが妥当であろう。夏服であるし、最後の希美の「支えるから待ってて」より、まだコンクールは終わっていないと考えられる一方、プール写真を共有しているからである。ここに関してはだらだら書く余地はないかな。

・ストーリーとか
序盤は、全体的にポテンシャルの山、不安定つりあいの位置に居続けて心が休まらない。化学屋だから「のぞ-みぞの結合エネルギーが高い」の一言で片づけそうになる。 アニメ2期前半で一度は解決したかのように見えた希美-みぞれ問題が、実は解決していなかったということから始まる。なぜ不穏に感じるかといえば、会話が少ないのだ。どこかぎこちなく、よそよそしさを感じるのである。そんな状態から、剣崎梨々花がみぞれと親密になることを試み、新山先生が音大進学を勧め、他方希美も会計の仕事やフルートパートの指導をする、というふうなことが、淡々と進んでいく印象であった。だが、淡々と進むなかに、どこかチクりと刺さる場面が、音楽室であるとか、端々に現れている。
それで、麗奈の発言が転機となり、その不安定さが解消へと向かう。その流れは急激であり、画面を2つに割ることでお互いの解決を同時に見せる。さながら、「もしかして、俺/私たち、入れ替わってる!?」のような、分かりやすい演出である。
この解決を経て、みぞれのソロが大きく覚醒する。その様は原作小説(後編,p236-240)に描かれた通りに本作でも描かれ、希美が途中で吹けなくなるわ周囲がやたらにざわつくわ、とにかくとんでもないソロが生まれたのだ。この部分の音楽的描写は、さすがに響けシリーズといったところであり、何かもうとんでもなく上手いわ、吹けなくなる様ですらリアルに表現されるわで、ただただ圧倒されるばかりであった。
そして最終的には、お互いがそれぞれの道を進むことを示唆するかのような、左右対称な方向転換のカットや、図書館での「一般大学用センター試験過去問レビュー」の貸し出しなどを経るが、「ハッピーアイスクリーム」の下りを経て、(筆者が思うには)奇麗な解決となったわけだ。
全体として素晴らしい話であり、スッキリした解決となり良かったとは思うのだが、尺が足りないかなと感じる面はあった。特に、「リズと青い鳥(童話)」のシーンや中学の回想シーンがちょくちょく挟まれるのだが、少し慌ただしいかなと思ってしまった。
あと、本作単品で成立はしているものの、これまでの「響け!」シリーズのストーリーを知っていないと分かりづらい面はあったと思う。

・その他、小ネタ
・1年生男子をClに1人、Percに1人確認。臼井ひとし/田邊名来の後継者か??
・「リズと青い鳥(童話)」のシーンはドイツ語圏か。特定の街のモデルは無い?
・京阪電車登場せず。
・例のセブンも登場せず。ていうか学外のシーンが最初と最後だけ。
・フグがかわいい。梨々花がフグに例えられているのが面白い。
・生物室の二重らせん型の分子模型、二重らせんなのにどう見てもDNAじゃないしムズムズする。
・中野蕾実の朝食はフレンチトースト。
・中野蕾実のワンピースは1年生には小さい。
・優子の使っていた「センター試験過去問レビュー」、タイトルは河合なのにデザインが駿台。
・整数の性質は数A。3年でやるってことは多分文系数学の演習かな?
・井上順菜出てこんやんか!

・まとめ
「リズと青い鳥」、良い映画であった。音が少ないのも相まって、終始緊張して観られる。また、響けシリーズの設定でありながら「個」をクローズアップしていて、新鮮である。
また、画面、音声、その他演出を駆使し青春時代の心の機微を表している点が非常に素晴らしい。ボキャ貧なのでこれ以上の言葉が出ない。

・さいごに

自分の感性や感情で観てもらえたら嬉しいです。感じたことそのままがその人(観た人)の「映画」になってほしいなと思います。

—吉田玲子(脚本),「リズと青い鳥」ガイドブックp.7

ってガイドブックに書いてあったし、あんま堅苦しく考えるものじゃないな。

高校の吹奏楽部の中のミクロな人間関係。まぁ懐かしいといえばそうなのかもしれない。他パートを耳コピして勝手に遊んだり(中盤のくみれい)とか、自分の感情にも結構共鳴するところが多かったかなと、改めて思う。

てなわけで「リズと青い鳥」についてだらだら長々と書きました。また次の更新で。


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です