サンライズ、全部乗る EXTRA STAGE ~正月の92号編~

昨年夏、サンライズ瀬戸・出雲号の全てのグレードを制覇し、記事を執筆した

さて、サンライズ出雲号には、最繁忙期にのみ走る臨時列車の、91号・92号がある。部屋のグレードこそ制覇し、そして全運行区間をとりあえず片道は乗車した。しかしながら、この臨時便は、定期便よりも4時間以上余計に時間がかかるという点において、実に興味深い列車なのである。ふつう列車に、同じ料金で乗るならば、速い方がよいのは言うまでもないだろう。しかし、ことサンライズ号においては、同じ料金で長く楽しめるという考え方ができるのだ。そこで今回、正月のサンライズ出雲92号に乗ることとしたのだ。

旅の始まり

横浜線の始発で羽田空港に向かい、JL277に搭乗。もちろんJALはセールで抑えてある。横浜線の始発は三が日だけあって空いていたものの、スーツケースを持った旅客が多く、帰省シーズンを感じさせた。そのまま東神奈川から京急へ。京急へは推定百人ぐらいの民族大移動が発生していた。そして急行で羽田空港へ。

羽田空港の出発時刻表。

羽田空港では、三が日ではあるもののさほど混雑は感じず、スムースに保安検査を抜け、ラウンジでダラダラしていた。去年から飛行機での旅行が増えたので、羽田も慣れっこである。しかしながら北側のラウンジに入ってしまったため、3ゲートまでかなり歩くことになってしまった。そしてその間に搭乗が終わりかけ、「最終案内してるよ!!!」というアプリの通知・メール・SMSが一気にきてしまった。まあ列が切れかけのところに合流できたからいいでしょう。

当日の天候は曇り。34RからのDepatureでありながら、大井埠頭を超えたあたりで雲に突入。Awakening Promiseのサビ前体感とはならなかった1。正直4時起きで眠かったので飛行機の記憶はほとんどない。強いて言うなら機内誌でLife Status倍付キャンペーンを知ったぐらい。

機上から眺める富士山が美しかった。

ほぼ定刻通りに出雲空港に着陸。出雲大社へ直行するバスに乗ろうとしたものの満員で続行便に誘導。さすが正月である。続行便のバスは、出雲大社直前までは変な渋滞もなくスムーズに運行されたものの、車内で喋る人はおらずすこし厳かな雰囲気だった。

連絡バス@電鉄大社前にて

出雲大社詣

出雲大社に到着。渋滞が懸念されたので電鉄出雲大社駅にて下車。昨年5月にも出雲大社自体は来ているが、今回は本殿の公開があったほか、正月だけあって楽隊を用いた行事が行われていたのが印象的であった。

出雲大社の正門前
何らかの神事

有名寺社で人は多いのだが、順番待ちで人が動かないとかいったことはなく、快適に参拝できた。願った内容はどっかでポエム化するかもしれないし、しないかもしれない。というかしないと思う。その後、朝食も碌にとっていなかったので、出雲そば「菊次郎」にて開店直後の出雲そばと、出雲ぜんざいを食した。

冬なので温そばにしたが、濃いめのつゆにつけられたそばと岩のりの絡みあいが大変良かった。また汁を吸わせることでのりがやわらかくなるのだが、そのバリエーションを楽しむことができた。ぜんざいは焼き餅とあんこの汁。まあ一般的だな、と思ったら、後で調べたところによると出雲がぜんざいの発祥の地らしい。らしさはあまり感じられなかったが。

岩のりそば
出雲ぜんざい

その後は、土産を物色しつつ正午過ぎの一畑電車で出雲市駅へ撤収。この頃には大社周辺は激しい渋滞が発生しており、やはり軌道系交通は正義だと思った。と思ったものの、一畑電車の乗車待ちも40~50人程度に達しており、臨時ダイヤを組むほどとなっており初詣需要の大きさを感じさせた。

大社周辺の渋滞
この車両は近々引退らしい。

サンライズ出雲92号

さて本日のメインイベント。例によって電鉄出雲市着後、らんぷの湯で風呂に入った後、出雲市駅へ向かった。セブンイレブンで買い出しをしたのだが、13時半頃にはレジ列が10人以上並んでいた。恐るべしサンライズ効果、と言いたいところだが、直前のやくもに乗った客も多数いたようだ。

先行の普通列車が3分ほど遅れたこともあり、出雲市駅には13時49分頃の入線。慌ただしく乗車するとすぐに出発した。アナウンスは「臨時特急サンライズ出雲92号」と、臨時であることを強調していた。

ファンに囲まれながらの入線。人気の高さが伺える。
昼間から乗れる寝台特急で、昼間から飲酒。

宍道駅はほんの数十秒で停車、発車。しばらくすると、宍道湖の観光案内アナウンスが入った。定期便では夏至前後しか見られない宍道湖の景色についての解説が入るのも、臨時便ならではであろう。ただ、筆者の個室は進行方向右側、すなわち山側であるので宍道湖は一切見えないのだが。そして宍道湖エリアの山側の車窓は森しかなく、ひどく退屈であった。そのため、テザリングでブログを書いている。とはいえ、今回の個室はシングル。ベッドに座ってパソコンを打つのは腰に来る。そして上階であるのでカーブでの傾きがいちいち大きい。

そして程なくして、またも玉造温泉で交換のための運転停車。というか玉造温泉ぐらい客扱いすれば良いのにとは思う。バラパンの縁結び仕様と通常仕様の味を比較したのだが、縁結び仕様のほうが若干しょっぱい気がした。縁は涙でできている、ということなのだろうか。

松江には5分ほど停車。外に出てみたが寒かったので引っ込んだ。松江からは速度が一段落ちたような気がしている。ゆったりと走りながら、2つ先の揖屋駅でまたも交換待ち。でも反対列車来なかったけどなんでだろう。と思ったら自転車よりも遅い速度で走っている間に、反対方向からの列車が。なるほど待機線路が長い、ということか。このタイミングで検札。始発から乗ってた割に、回ってくるのはちょっと遅いなーと感じた。やはり端の車両だったからだろうか。そしてつぎの荒島駅に停車。本当に各駅停車じゃないか!(歓喜)

荒島駅の次は正規の停車駅の安来。プロテリアルの工場は駅前らしい。

米子では撮り鉄がたくさんいて、なんか撮られている気分になった。各駅発車後に、「大変お待たせいたしました、臨時特急の〜」と始まるアナウンスが美しい。踏切を超える時に、地元の学生が笑っていたのが印象的だった。普段通らない時刻だからだろうか。

伯耆大山に一瞬止まったあとすぐ発車。大山の観光アナウンスがあったがこれも車窓左側。一度個室を出て左側に行ってみたが、アナウンス通り「あいにく頂上には雲がかかっていた」。並走する車の助手席から笑顔で振られた手が印象的であり、思わず振り返してしまった。

雲がかかっている大山
PM3:41 という室内の時計も、臨時ならでは

普段見ることのできない、陽の出ている時間の伯備線を進み、16時前には根雨駅に到着。ここで20分の大休止であるが外には出られない。根雨は雨と書いてある割にはそれなりに雪が降っていて、厳冬期であることを感じさせた。車内探検をしたのだが、6号車は知り合いに連れて行ってもらったパチンコ屋の匂いがするし、5号車のノビノビはなんか匂う。何の匂いかはわからないのだが、おぉっ、てなる感じだ。

根雨の雪
夕刻の伯備線をロビーカーから

根雨あたりで眠くなってきたので睡眠を取ると、次の瞬間は多分黒坂の先。時折沿線に撮り鉄の姿を眺めながら、夕暮れの山間を進んでいく。伯備線は定期サンライズでしか通ったことがないので、その景色は眠いながらも新鮮であった。とはいえ、夕刻の日が沈みかけた山間の景色というのは寂しいもので、同じ列車の中に150人程度は乗っている「はず」であるのにもかかわらず、孤独感を感じるものであった。写真を撮り逃したが布原のホームの短さにびっくりしたし、民家が少ないと思った。

いろいろすっ飛ばして、次は8分停車の新見。ここではやくもとのすれ違いがあるので久しぶりに外の空気を吸いに出た。出雲市を出てからずっと飲酒をしていたのでぽわぽわした心持ちの中外に出てみると、やはり思いの外寒く、酔いが少しは覚めた。新見駅は3・4番線がないが、その分隣のホームとサンライズとの停車場所が遠いように感じた。

新見駅の待合室
夕刻の新見駅とサンライズ

17時30分頃、新見を過ぎてしばらくすると外はほとんど真っ暗になり、トンネルとの区別が難しいぐらいになってきた。GWの便であればもう少し陽は長いのだろう。

すっかり暗くなったあとの行き違い列車

途中、行き違いの停車を何回か経て18時過ぎには備中高梁に到着。ここは重要なポイントで、14分停車があるので車掌了承のもと駅前のローソンで補給ができるのだ。今回はLチキやマルエフを購入し、晩飯とすることとした。追い抜かれるやくもは多少遅れていたのだが、サンライズは定時。やくもとの並びを撮ったあとすぐに発車。

やくもに追い抜かれる

ここまでくるともう日没後もいいところ。金星と三日月を眺めながら、車内灯を消しうたた寝をした。日没後のサンライズは、車内灯を消して夜空を眺めるのが良い。というか、この時点でわりとベロベロに酔っていたし、倉敷出発後のこの原稿を書いている時点でもまあまあ酔っているのだが。そうすると気づけば倉敷で山陽線に合流。日没したこのタイミングでも撮り鉄がいた。

途中中庄で普通列車に抜かれつつ、ゆったりとした走りで岡山に到着。岡山では、四国からのしおかぜ12号の乗り換えを待ち3分遅れて19:29に発車となった。

中庄の発車票。「通過」はしていないのだが…
岡山駅では初めて「92号」の表示が登場した。

なるほど確かに、サンライズ瀬戸代わりの使い方もできるわけだ。岡山では反対ホームからの撮り鉄が多かったので、部屋の電気を消してカーテンを閉めた上で鉄に配慮した。岡山までは、主に第4種踏切で空笛を鳴らすことが多かったのだが、岡山からの運転士はミュージックホーンを利用しているようだ。そして岡山から先の山陽線は、これまでとは打って変わってキビキビした走りを見せてくれている。

瀬戸での運転停車あたりからだろうか、それなりにたくさん飲んだのと眠気が襲ってきて、とりあえず寝てみたら起きたのは姫路の少し先。辛うじて、定期便ではみられない明石天文館の案内放送、それから明石海峡大橋の案内放送とライトアップは見ることができた。

明石海峡大橋。定期便ではこの地点の通過が丁度0時前後となるため、運が悪いとライトアップを見ることができない。

西明石からは快速電車と並走。普段なら終電が行っているかどうかなので、これも臨時便ならでは。三宮では家族連れがスマートフォンのカメラをサンライズに向けている。さすがはサンライズ、有名特急列車である。そして大阪では14分の停車。大阪駅入線時には多くの鉄が隣のホームから写真を撮っていた。またxどうも車掌が有名車掌だったらしく、最後尾では乗客と車掌の記念撮影が行われていた。

記念撮影コーナー
先頭にも撮影の人だかり。

私は反対ホームに渡り列車の写真を撮りつつ、飲み過ぎの対処のため、へパリーゼを購入。ヘパリーゼの場所に悩み、気づけば発車5分前であったので急いでホームに戻り、ふたたび乗車。そりゃそうだよ、大阪駅でヘパリーゼ買わないもん。

大阪の11番線でサンライズが2本並ぶのも、この日だけ。

大阪を出ると、ちょうど淀川を越えたあたりでおやすみ放送があった。京都線内は始終前につっかえたようなだらだらした走りで京都まで通過。京都でいったん就寝することとした。客扱いのない深夜帯、貨物も走らない正月は書くことが特にない。

さてこの92号、運転停車が多少多いような気がしており、先頭車上段でありながら停車とともに衝撃を感じ目覚めてしまった。午前4時前には富士駅に到着。一度深夜のミニラウンジへと足を運んだが特に何もなく、定期便では停車する沼津駅の通過を見届けたうえで部屋に戻り二度寝。次に目覚めたのは国府津駅であったが、こちらも定期便とは異なった旅客線の通過であり、貴重な体験となった。

国府津の旅客線通過

さらに三度寝をすると、5時半に横浜到着前のアナウンスで目が覚めた。アナウンスないんじゃなかったのか。西と東でこのへんは連携がとれていないところである。通例、首都圏到着時は各線の運行状況の案内があり、ふつう平常運転であることが多いのだが今朝は京浜急行線が沿線火災で運転を見合わせているとのこと。本稿執筆時点での情報によると、この沿線火災はケーブルの焼損を招き、かなり長時間にわたり運転を見合わせていた。前日であれば空港に行けていなかったので困っていただろう。横浜駅でも鉄道ファンが待ちかまえていた。

サンライズ号でありながら日の出を見届けることなく、とうとう列車は6時23分に東京駅に到着。東京駅も、普段とは逆のホームである9番線に到着した。

今回お世話になったのはI1編成。これで、地味に車両5本のコンプリートも達成したことになる。

これを以て、サンライズ出雲92号の旅は終了となる。

東京駅にちょこんとたたずむ、短い7両のサンライズ
常磐線の「赤電」とも並んだ。

今回、16時間半にわたってサンライズ号に乗り続けたが、特筆すべきは伯備線内の日没前の景色であろう。これを個室で眺められるのは良い体験であった。一方、食には困る。というか、出雲市と備中高梁で仕入れた食材で翌朝までしのぐのはまあまあしんどく、翌朝目が覚めたのも腹が減ったからだった。あと調子に乗って飲酒しすぎないほうが良い。飲み会ではなくて一人で飲む寝台特急であっても、切に痛感した。

また、今回の乗車車両はI1編成であった。これをもって、全5編成の乗車も達成した。

おまけ: 箱根駅伝のスタートとゴール

せっかく東京駅に来たので、正月ということもあり途中下車した。大手町の読売新聞社の北・南にはそれぞれ箱根駅伝のスタート・ゴールが配置されている。地面にモニュメントが埋め込まれているが、スプレーでのマーキングがあり大会直後を感じさせた。

こちらは常設の地面埋込みタイプ
同位置にある、大会用と思しきマーキング

また帰路は中央線経由で、グリーン車の無料開放を利用。とはいえ、睡眠が十分ではなかったので途中寝落ちした。感想としては、やはりグリーン車以上でも以下でもない、と言った感じだった。中央快速線で2階からの景色を眺めることができるのが新鮮ではあったが。

中央線グリーン車からの眺め
  1. 本当は夜景。生活圏の関係から夜羽田を出ることはあんまりないから、実質は南風運用で南からApproachしないと体験できない。 ↩︎


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